空想かがく(仮楽)小説「着物が普通になる日」

 
ひじょうに個人的な見解ですが
着物が普通になるためには
洋服における「寛ぎ着・作業着・運動着」が
「着物」として認識される必要があるのでは無いかととらえています
言い換えると生活の中の「全ての衣類」が
「着物」に置き換えられないと
着物が普通になることはありえないと言うことになります
 
こちらも個人的な分類ですが
衣類を以下の六つに分類し考えます
1)礼装2)お洒落着3)普段着4)仕事着5)寛ぎ着6)運動着
さらに三つのグループにわけて下記の通り区分します
 
【グループA】
1)礼装
  国際社会との早急な摺り合わせの必要があったため
  男性は洋服に 女性は摺り合わせが早期に進んだと思われる
2)お洒落着(趣味の着物)
  趣味とする方々が愛好し続けたと思われる
 
【グループB】
3)普段着(見栄えの悪く無い着物、カジュアルファッション)
  戦争による着物の消失によって洋服に置き換わったと思われる
近年見直されている
 
【グループC】
4)仕事着(作業着・労働着)
5)寛ぎ着
6)運動着
  いずれも忘れられている
  もしくは着物と認識されていない
 
グループAは所謂「着物」として
ひじょうに多くの方々に認識されている衣類です
おそらく多くの方に浸透して印象と思います
 
グループBは近年見直されてきた「着物」です
現状では残念ながら一部の方々にしか認識されていませんが
これから少しづつ一般的に認識されていくことでしょう
 
さて本題のグループCですが
皆さんはどのような着物を思い浮かべますか?
 
海や川・山・田畑で働く仕事着の中には
伝統的な儀式として伝えられているものもあれば
飲食や清掃などの仕事着の中には
洋装の良さを取り入れ進化した着物もあります
 
夏を涼しく過ごす工夫をされた寛ぎ着もありますし
体をいたわる場面で進化しつづけている寛ぎ着があります
 
運動着については
もともと着物を着て行っていて
世界的なスポーツになった競技もあれば
かっての仕事着をスポーツウェアに取り入れると
この国の風土にあった性能を得るものもあります
 
さてここで最初の発言に立ち返りますが
「全ての衣類を着物に置き換えれば着物は普通と認識されます」
こう述べると「着物を強制する」ように感じる方も少なくないかもしれませんね
でも別に無理やり着せようと言うわけではなく
「仕事着・運動着・寛ぎ着の「着物」を認識する」
「そうした着物を着ている方を「着物姿」と認識する」
これだけなんです
 
簡単な事のようですが
おそらく難しいことなのでしょう
 
「着物はグループAだけじゃないグループBもあるんだ」と主張する方に
「着物にはグループCもあるんだ」と主張しても
「私にはグループBで充分 グループCは洋服で」と
思われる方のほうが多いのでは無いでしょうか?
 
でもこうした考えは
そのまま「着物は礼装やお洒落着で充分 普段着は洋服で」との考えにもあてはまります
そうした既成概念や固定観念
普段着の着物の見直しで少しづつ氷解したように
「作業着や仕事着・寛ぎ着の着物も着る物の選択肢の一つ」との認識が広まれば
着物が普通になるのでは無いでしょうか
 
泥や汗にまみれた作業着の着物があってこそ
こざっぱりした普段着の着物が生活の中で活き
軽快な普段着があってこそ
重厚なお洒落着や礼装が
場に応じて映えるのではないでしょうか
私はそう思います
 
、、、私が図書館の片隅で
Y博士の文献に目を通したのは
稲刈りも近い秋の日の夕暮れ時だった
洋服や着物と呼ばれた
衣類をあらわすであろう「ソレ」が
いったいどのような衣類を示すのかわからないが
いささか気負いすぎる文体に親近感を感じた私は
この文献の貸出手続きをとることにした
席を立ち
衿先をひいて
着崩れを直した私は
図書館のゲートに向かった